研究の概要
従来、頭蓋頚椎移行部(CVJ)腹側病変に対する外科治療は、経口法や前方頚部アプローチが主流でしたが、嚥下・発声障害、感染、視野制限などの課題が指摘されてきました。本論文では、**経鼻内視鏡下に鼻腔—鼻中隔粘膜間を進入し、鼻咽頭粘膜切開を介してCVJ腹側へ到達する「Endoscopic Endonasal Transnasopharyngeal Approach(EETA)」**の手技を体系的に記述し、適応判断、気道管理、術後不安定性(頭蓋頚椎不安定)への対応を含めた治療戦略を提示しています。中咽頭切開を回避できるため、気道閉塞や術野汚染・感染リスクの低減が期待されることを示しました。
研究のポイント
本テクニカルノートは、CVJ腹側病変に対する経鼻内視鏡アプローチの到達ルートを鼻咽頭側から最短経路で再設計し、鼻中隔支持構造と鼻腔機能を温存しつつ十分な直視・斜視視野と器具操作性を確保できることを実地症例で検証しています。麻酔・気道戦略、ナビゲーション設定、粘膜切開・閉創の要点を明確化することで、中咽頭切開法で懸念される気道合併症や術後感染のリスク低減につながる実践的プロトコールを提示しました。さらに、**病変摘出や除圧後の不安定性に対する段階的意思決定(前後方固定の要否・時期)**を整理し、機能温存と低侵襲性の両立を図る上で汎用性の高い選択肢となり得ることを示しています。
引用
Hongo T, Morinaga Y, Oshida S, et al. Endoscopic Endonasal Transnasopharyngeal Approach for Ventral Craniovertebral Junction Lesions: A Technical Note. Neurospine. 2025;22(3):737–747. doi:10.14245/ns.2550964.482